第14回<劣等感と負けん気は企業を強くする>
未来経営塾では、劣等感のある人は経営者に向いている、といままで何度か語ってきた。成長を続ける企業の経営者の多くは何らかの劣等感を持ち、それを裏返した負けん気で事業経営に挑み企業を成功に導いている。劣等感が強ければ強いほど、和弓に両腕の力が徐々に加わって、矢に的(まと)まで届くパワーがキリ、キリ、キリと蓄えられるように、チャレンジ精神が高まっていく。事業経営をリードする推進力の源泉は、劣等感と負けん気だと考えている。
人は誰でも劣等感を持っていると思う。かく言う僕も劣等感の塊だ。それをなるべく他人には隠したいものなので、読者にとっては残念かもしれないが、個別具体事例は避けることにしよう。ならば、コラムにならないだろう…(笑)ということで、人ではなく組織として捉えたらどんな事例があるか。
劣等感の反意語は、優越感である。
いまから30年前の1989年当時の文系男子の就職人気ランキング(リクルート調べ)では、三和銀行(現三菱UFJ銀行)を筆頭に都市銀行4行がトップ10に並んでいた。
それが、2019年卒のマイナビ大学生就職企業人気ランキング(文系)では、都市銀行がトップ10から姿を消し、『銀行員大失業時代』とか『大失職』といったタイトルの新刊書が書店に並ぶようになった。
まさに優越感から劣等感への転落である。
先日、メガバンクのデジタル改革を推進する部門を統括する方から話を聞いた。現在の銀行内の仕事の65%は数年内にRPA(Robotic Process Automation)に取って替わられ消えてなくなるだろう、という。超低金利時代のなか、世界中でキャッシュレス化が進展し、リアル店舗の必要性が薄れ、あらゆる手続きがデジタル化する流れに沿わないと銀行といえども生きてはいけなくなったのだ。
劣等感+危機感にさいなまれたままでは後退するだけなので、なんとかしないと。そこで、負けん気を出し、いろんなことにチャレンジしているようだ。
ウェブサイトの改革、スマホアプリの充実、AIを活用したサービス拡充、AIによる企業分析レポートの作成、RPAの大規模展開、ブロックチェーン適用領域の拡大、スマートコントラクトやIoTの推進など、顧客からの信頼を損なわずブランド力を維持するために、リスクを取って最大限の挑戦を続けるという。
いついかなる時代も、変化する環境に対応して変化し続けないと、生き物同様に企業も生き残ってはいけない。
ここに述べた銀行だけでなく、あらゆる業種・業態の企業が考え、常にチャレンジし変化し続けなければ、やがて廃業の憂き目に遭うのは歴史の示すとおりである。
読者諸氏の劣等感をうまく育て上げ、変化する方角へ向かせ、負けん気を正のエネルギーに変え、企業を環境変化に適用すべくいろいろなチャレンジを続けてほしいと願っている。ファイト!