【連載コラム】第13回/月刊『養豚界』という雑誌を知っていますか?      

第13回/月刊『養豚界』という雑誌を知っていますか?

日本経済新聞の朝刊1面下の書籍広告欄に、毎月1回気になる広告が載る。それが月刊『養豚界』である。

僕はもともと豚が好きなのでずっと気になっていたこともあるが、毎月の特集が「客観的指標をもとに農場を改善!」とか「良い離乳のための哺乳期管理」や「肉質改善計画」など、マネジメントの用語が多用されているのだ。ひょっとして養豚実務家たちがPDCAを回す時に、何でも「数値化して、見える化している」のではないかと思い、その雑誌のバックナンバーを2冊入手してみた。

思った通り、いろんな論稿に数値目標が出ている。経営改善のためのベンチマーク数値だけではなく、日本養豚開業獣医師協会(初めて知ったが、世の中いろんな協会があるものだ…)が選ぶ成績優秀農場の表彰基準に、たとえば「1母豚当たり粗利益」とか「1母豚当たり出荷枝肉重量」や「離乳後事故率」などと、効率性の指標が並ぶ。会社の経営指標であるKPIと同じだ。

また、「投資の費用対効果」についての論稿や「BS、PL、キャッシュフロー計算書の解説」、初学者のための「豚クイズ」などもあり、いろんな観点から養豚現場の実務や研究成果が学べる工夫がなされている。実におもしろい。

皆さんは、同業者以外の他人に初めて自分の仕事や事業の内容を話そうとするとき、いったいどんなことに気をつけるだろうか。

具体的な話題を中心に標準的な業務のプロセスや売上規模などの話はすると思うが、どんな目標があって、こんな努力をすると達成度が上がる、などという話はしないだろう。ましてや、数値化された指標を織り交ぜて話すだろうか。

経営の意思決定は、経験や勘などの感覚だけで行うべきものではなく、数値に裏打ちされると信憑性が増し、指揮命令も素早く伝わり、業績評価もしやすい。感覚だけの意思決定に失敗すると、何度も同じ間違いを起こすことがあるが、失敗したときにも数値の裏付けがあれば、どの時点でどのように間違ったかを分析できるので、二度と同じ失敗を繰り返さないようにすることができる。

実は、それらの数値の多くが会計上の数値である。逆に言えば、経営者が過去・現在・未来の会計数値を重視して経営しなければ、事業は安定成長できないのではないだろうか。

月次決算をなるべく早期化し、翌月5日か6日ころまでには月次決算の実績数値を予算と比較・分析すると同時に、ベンチマークする経営指標と照らし合わせ、すぐに修正すべきところは行い、改善していく。その地道な繰り返しこそが安定成長の礎なのである。

「人の振り見て我が振り直せ」という古いことわざがあるが、まさに「養豚界」の経営上の工夫を見て、自社の反省をすべき経営者は多いかもしれない。